箱根駅伝のルールで「繰り上げスタート」というものがあります。
このルールがあるゆえに、毎年たすきを次の選手に渡せなかった選手たちの姿を観ることになり、切ない気持ちにもなるのですよね。
次の選手にたすきを繋げるために、どれほど苦しくても懸命に走ってきたのに・・・たすきを繋げることができなかった選手の思い、仲間のたすきを受け取ることができずにスタートしなければならなかった選手のことを思うと、なぜこのような厳しいルールがあるのだろうと感じます。
ただ、繰り上げスタートのルールは、箱根駅伝に関わらず、他のマラソンや駅伝にも採用されているルールでもあるんですね。
ということで「繰り上げスタート」について、なぜそのようなルールがあるのか、また、繰り上げスタートをした場合にたすきはどうなるか、詳しく見ていきたいと思います。
初心者はこちらで箱根駅伝のルールや基礎知識を学んでおくと、より観戦を楽しめます。
目次
箱根駅伝の繰り上げスタートの意味やルールとは?なぜあるのかその理由も
まず、繰り上げスタートというのは、先頭走者から一定時間離された場合に行うスタートのことを言います。
具体的には、
- 往路の鶴見(2区)・戸塚(3区)中継所は10分遅れたチーム。
- 往路の平塚(4区)・小田原(5区)中継所は15分遅れたチーム。
- 復路すべての中継所は20分遅れたチーム。
この3つの場合に適用されるもので、先頭走者から10分または、15分、20分経過した段階で、前走者が到着するのを待たずに(前走者のたすきを受け取ることなく)中継所にスタンバイしていた次の選手がスタートをします。
ただし、復路のスタートである6区に関しては、5区をゴールしたチームのうち先頭走者から10分以内にゴールした場合は、その時間差通り順次にスタートをして、10分以上遅れたチームはスタートの10分後に一斉にスタートします。
これは、6区だけで行われるもので、復路一斉スタートとも呼ばれています。
なぜ、繰り上げスタートが行われているのでしょう?
箱根駅伝をはじめ、他のマラソンや駅伝も競技ルートは一般道を利用していますよね。
そのため、競技中は交通規制が行われていて、年間を通じて交通量が少ない日程と時間帯に箱根駅伝を開催しているものの、少なからず渋滞が起きているとも言われています。
つまり、交通規制をすみやかに解除するという目的で、繰り上げスタートというものが採用されているのです。
とはいえ、中継所まであと少しというところでの繰り上げスタートは、見ている方も辛いですよね。
箱根駅伝が害悪と言われる理由に関してはこちら
>>>箱根駅伝が害悪大会と言われる理由とは?弊害で燃え尽きる選手もいるの?
箱根駅伝が害悪大会と言われる理由とは?弊害で燃え尽きる選手もいるの?
箱根駅伝繰り上げスタートの場合にはたすきはどうなる?
箱根駅伝に出場する選手は、大学のカラーのたすきを掛けています。
そのたすきを繋ぐということにも大きな意味がある箱根駅伝ですが、前走者を待たずにスタートする繰り上げスタートが行われた場合、このたすきはどうなってしまうのでしょうか。
当然、たすきを繋げることができませんので、箱根駅伝主催者側が用意した通称「白たすき(黄色と白のストライプ)」を掛けてスタートします。
ルールと分かっていても、やっぱり何か物足りないと言うか、寂しい気持ちになってしまいますね。
ただし例外の区間があって、往路のゴールである5区と復路のゴールである10区では、大学が用意したたすきを掛けることができます。
その際は、5区または10区の走者が既にたすきをかけている状態で待機していて、前走者から白たすきを受け取った後にスタートしますが、白たすきはスタッフに渡すなどして手放すそう。
ゴール地点は大学のたすきで、という運営側の配慮なのではないかとも言われています。
1本のたすきを繋ぐことはできないけれど、大学のたすきでゴールができるというのは良いことだと思いました。
箱根駅伝の何が面白いのかその理由はこちら
>>>箱根駅伝の何が面白いの?なぜ関東の大学だけなのかその歴史も
箱根駅伝の何が面白いの?なぜ関東の大学だけなのかその歴史も
箱根駅伝のタスキのルールについて詳しくはこちら
>>>箱根駅伝の襷のルールとは?繰上げスタートの時はタスキの色が違う?
箱根駅伝の襷のルールとは?繰上げスタートの時はタスキの色が違う?
箱根駅伝繰り上げスタートからの逆転優勝はあるの?
それでは最後に、「繰り上げスタートからの逆転優勝」について触れてみたいと思います。
駅伝の選手は1kmを3分目安で走っているので、これを時速に直すと時速20km前後になると言われています。
50mを9秒で走り続ける、と言った方が分かりやすいかもしれませんね。
50mをダッシュするのではなく、それを1区間キープしながら20km近く走り続けているのですから、相当速いということが想像できるのではないでしょうか。
もちろん、一定の速さで走ることは難しいので、途中でペースダウンすることも考えられますよね。
そうした中で、過去にどのくらいの時間差を逆転したことがあるのか調べてみたところ、1986年には6分32秒差を、その翌年には3分55秒差を逆転して順天堂大学が連覇を果たした事がありました。
しかし、5分を超える時間差の逆転はごく稀なことで、おおよそ3分の差であれば逆転の可能性はあると考えられると言われています。
3分といえば一つの目安である1kmのラップタイムですから、繰り上げスタートの10分遅れの場合は距離にして3kmあまり、20分遅れの場合は6kmあまり離れていることになります。
前回の92回大会の結果を見てみますと、往路1位の青山学院大学と2位の東洋大学の差は3分04秒差でした。
復路でもその差は縮まらず、7区から10区までこの2校の順位の変動はないまま最終的に青山学院大学が優勝、復路は4分07秒差となっていました。
また、復路と往路の記録を合わせて決まる総合順位では、6区でのみ復路一斉スタートした3校だけが健闘して10位以内に入っただけで、その他の区間で複数の繰り上げスタートをしたチームのほとんどは11位以下という成績でした。
逆に言うと、総合順位で10位以内に入るチームの大半は繰り上げスタートを行っていないということになります。
過去5年間の記録を見ても同じで、繰り上げスタートを行ったか、行っていないかでシード権が与えられる10位以内に入れるか否かが決定するようです。
以上のことを踏まえると、繰り上げスタートからの逆転優勝は、ほぼ不可能だと考えられます。
しかし、棄権とは違い記録や順位は公式に残りますから、1分でも1秒でもタイムを縮めて、翌年に繋がるような走りを見せて欲しいですね。
箱根駅伝の棄権のルールに関して詳しくはこちら
>>>箱根駅伝での棄権に関するルールとは?記録の扱いとその後についても
箱根駅伝での棄権に関するルールとは?記録の扱いとその後についても
繰り上げスタートがなぜあるのか?その意味やルールまとめ
繰り上げスタートというのは知っていましたが、これほどまでに順位に影響するとは思いませんでした。
総合順位で10位以内に入るチームは、まさに総合力が強く、たすきを繋ぐ力を持ったチームと言えるのかもしれませんね。
たすきの色を見ればそのチームがどういう状況なのかも分かるようになりましたし、途中からテレビ観戦をしても楽しめそうです。